2020年1月21日火曜日

【002】裁判長のレンゲ

薄暗い店内に入ると、思ったよりたくさんの人でワイワイガヤガヤしています。

「オレだオレだ」「私よ私」「バカやろー、オレに決まってんだろう」「何言ってるんだよ。勝手なこと言うな」
とか、もう何がなんだかわからない状況です。

その時
「カンカンカンカン」と何かで丼を叩く音。

「静かに静かに」と右手にレンゲを持った人が現れました。
「あ 裁判長」「裁判長さまだ」とあちこちで声が。

「コホン」とわざとらしく咳をした裁判長が
「これから、どの丼が一番偉いのか決める裁判を開きます。
今回から規定により、一般人から裁判員を呼ぶ事にしました。
今日、裁判員として参加してくれるのはボウルくんです」

皆があたりをキョロキョロ見回します。
誰もが見慣れないボウルのところで視線を止めるので、なんとなくボウルがちょこんと頭を下げるとパチパチパチパチパチパチと嵐のような拍手。

生まれてから、拍手など受けたことのないボウルは心臓がドキドキしているのを感じました。

裁判長のレンゲが言いました。
「意見のある人は手をあげて、指名されたら発言してください」

ハイハイハイハイと多くの手が上がりました。

裁判長が「その真ん中の人」と指を差すと

その人は、スクッと立ち上がって
「えー、なんと言っても丼の一番は海鮮丼につきます。四方を海に囲まれた日本では各地で名産の魚をふんだんに使った海鮮丼が大人気です。サーモンやサバ、マグロ、イカ、ウニ、エビ、カニなど豊富な食材で色とりどりの丼が楽しめます。一番は文句なく海鮮丼でsしょ」と自信満々。

ところが外野からは「海鮮丼は高い」「ぼったくりだ」「地元と言いながら輸入魚も入ってる」などボコボコ意見がブンブン飛び回ります。

裁判長が次に指名したのが「はい、一番左の人」

立ち上がると「コニチワ〜 私は丼の一番は中華丼ある思うよ。強い火で鍋に入れればなんの葉っぱやお肉でもOKあるね。中華鍋一つ有れば世界中で作れるよ。宣教師は聖書持って世界征服しに出かけたけど、中華鍋持って世界征服に出かけた中国人の勝あるね。日本にもコトワザありま〜す。花よりダンゴ。世界では、聖書より中華鍋なので〜す。ミサイルいりませ〜ん。中華鍋でOKで〜す」

とこれまたよくわからない演説。

とたんに、「ノーノー 中華丼ダメね。ごっちゃごっちゃいろいろ混ざってるだけで、味に思想が感じられません。それに、中国食材は怖いでーす。前にハンバーグがダンボールでできてました。スイカやカボチャは爆発しまーす。」の声。

ハァ? オマエどっから来た?

「ワタシはるばる海を漕いでタイから来るでーす。鍋ナンバーワンはトムヤムクンOK みんなそう言いま〜す」

と、またガヤガヤワイワイ。


「あんなの辛くて誰も食べられない。それに丼じゃないだろー、あれは」


つづく

2020年1月19日日曜日

【001】始まりのうな丼と牛丼とかつ丼と天丼

ある日のこと

1通の迷惑メールが、リ〜ン リ〜ンと黒電話の音にメール着信音を設定してあるボウルのiPhoneに届きました。

怪しさ満点のメールですが、メールタイトルの前に並ぶ「卍卍卍卍」のマークと「お願いします」の一言につられて開封。

そこには、こんな文面が書かれていました。

ボウルさま
あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。
トンカチもたないでくなさい。      レンゲ 拝

メールには、近くのお客さんが来なくて潰れてしまった「純和風のフランス料理店」の空き店舗への地図が一緒に載っています。
時間は00:00ですから、真夜中ということになります。

なんだろう? と思いながらも翌日の00:00分に「純和風のフランス料理屋」跡地に行ってみるとボーッと店内が明るくなっています。

入り口に行ってみると真っ黒い顔をした、まるでアメリカ映画に出て来るマフィアのボスの護衛のようなゴッツイ男性がいきなり

Put your hands up」

「はぁ?」
早口で外国語もまったくわからないボウルには、理解できません。

困った! 困った!

そうだ、困った時はGoogleだった、と思い出し
ゴッツイ男の前にグイっとiPhoneを差し出しました。

男はギョッとしたようで、パッと腰に手をやろうとしましたが途中でやめて
再び
Put your hands up」と叫びました。

するとiPhoneの画面には






な、なんだよ、と思いつつも手を上げると大きな手で、バシバシバシッと乱暴に身体検査。
ウチワのような大きな手でバシバシバシバシ叩きます。

「痛ててて」と思いながらも我慢していると
ゴッツイ男が
「ようこそ、おこしやす。中に入るでゴンス」
と、日本語。

なんだよ、最初から日本語で言えよって。


(続く)

【002】裁判長のレンゲ

薄暗い店内に入ると、思ったよりたくさんの人でワイワイガヤガヤしています。 「オレだオレだ」「私よ私」「バカやろー、オレに決まってんだろう」「何言ってるんだよ。勝手なこと言うな」 とか、もう何がなんだかわからない状況です。 その時 「カンカンカンカン」と何かで丼を叩く音...